■「だせぇ」
ちょっと昔の話。今よりも僕はずっとずっと言い訳をするのが好きで、理屈を説明するのが好きだったんです。
でまぁ、当時も今と変わらずへたくそで、
フットボール仲間と飲みながら「みんな練習に来ない、だから試合も集まりが悪いんだ」と文句言ってたのです。
新宿で。
したらまた、この友達が「じゃあ、わかった」と言うのです。「今からみんなに連絡を取る」と。
主将になりみんなに直接連絡なんかしたことないオレは焦りました。「いや、ちょっと待って」とあわてます。
でも友達は、少し遠くで飲んでいる2人の女子マネージャを指さし、「彼女らに言って協力してもらうよう言って来ようぜ」と言い、席を立ちます。
オレは「いや、向こうも迷惑だし」とか「さすがにうざいっしょ」とか言って止めます。
友達は「嫌がられたら戻ってくればいいんだよ」と言ってましたが、オレが動こうとしないので行くのをやめました。
「じゃあ、今から、全員呼び出そうか?」と友達は言います。
「逆にそっちの方が難易度高いだろ」とオレは顔をしかめます。
「でも集まりが悪いんだろ? だったら集まるようにするしかないだろ」と友達は口調を強めます。
「そうだけど、もっと普通に集まって欲しいというか」とオレ。
「なに、普通って?」
「練習とか、ミーティングとか、そういう…」とハッキリ言えない自分。
「じゃあ、オレが今からみんな呼んで集まってもらって説明して、それで練習の重要性を説けばいいか? それは普通だよな」という友達。
「それは…、だけど、ほら、お前もこの前言ってたじゃん。イヤイヤ参加している奴が多いとか」
「は?」
「その…」
「…イヤイヤじゃねぇよ。なんとなくだよ」
「あ、そうだったね。…でもオレ、なんとなくとか、少し苦手だし。そこまで集まって欲しいわけでもないし…」
友達はオレの顔をじっと見つめながら、一言、
「だせぇ」
と言いました。
ごちゃごちゃ言ってるけど、お前の統率力が無いだけじゃん
彼は言います。
言い訳をして、さも「こういう事情なんだ、だからしょうがないんだ」って言うけれど、
統率する能力がない自分を必死になって正当化してるだけじゃん、と。
みんなが集まるよう努力する勇気もないやつが、集まりが悪いとか言うんじゃない。
どうせみんなに集まってもらうよう言えって言ったとすれば「無理やり来てもらうような練習では…」って言うし、
ミーティングを頻繁に行えって言えば「ああいう雰囲気は苦手だし、そういうことは会社と両立出来そうにない」とか言うだろうし、
みんなで仕事を分散してやるって言えば「いや、彼も、誰も忙しそうだからって」って何かにつけて言い訳するんだろ?
だったら「自分にはチームを統率する能力がないんです」って素直に認めて文句言うんじゃねぇよ。
そっちの方が、よっぽど何かってときに力になりたいってと思うし、
つーか、できない理由並べて、今の自分を否定させずに、わかってもらおうとするその魂胆がだせぇ、と。
あれは恥ずかしかったなー。すげぇ。恥ずかしかった。
その場は言い訳もできず笑ってごまかしたけど、家に帰ったら彼の顔とセリフが思い浮かんで、
布団の中で「でもさ、でもさ」と必死に言い訳考えてた。
オレにはオレの事情があるんだ、しょうがねぇじゃんかよって。ウルフルズの「ええねん」聞きながら(笑)
ひとしきり考えたら、そんな自分を「だせぇ」って思った。
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